減少しつつあるヤマコウモリの生態

ヤマコウモリというコウモリをご存知ですか?コウモリの中でもあまり馴染みのない名前かもしれませんが、実は食虫コウモリでは日本最大のコウモリで、その個体減少が問題となっているコウモリです。

食虫性では最大!ヤマコウモリとは?

ヤマコウモリの特徴

ヤマコウモリは翼手目ヒナコウモリ科に属するコウモリの仲間です。頭胴長8.9~11.3cm、前腕5.1~6.6cm、尾長5.1~6.7cm、体重35~60gで食虫コウモリとしては日本で最も大型の種類です。体毛は赤褐色、被膜は暗褐色をしていて、全体的に光沢のある体をしています。細長い翼は長距離を飛ぶのに適しています。

他のコウモリと同様に超音波を発しますがその周波数は他のコウモリに比べると低く、人間の可聴音域にあるため、人によってはその音を聴くことができるそうです。「キンキン」「カンカン」といった一定のリズム音で聞こえます。また視覚にあまり頼ることがないためか、比較的目は小さいです。

ヤマコウモリの生態

ヤマコウモリは中国東部、朝鮮半島に分布します。日本においては北海道~沖縄まで幅広く分布しています。秋に交尾を行い、冬になると冬眠をします。翌年の初夏に通常2頭、まれに1頭を出産します。出産・哺育を行う雌は数十頭~100頭を超える群れをなし、大きな樹洞で繁殖コロニーを形成します。一方で雄は1~十数頭の小さな群れを作って分散し、子育てに参加することはありません。出産・哺育期以外は雌雄ともに生活し、100頭あまりにもなる大きなコロニーを形成します。

ヤマコウモリはどこに住んでいるの?

ヤマコウモリはどこに住んでいるの?

ヤマコウモリは平地から低山にある常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林などに生息し、昼間は樹洞をねぐらにして休息しています。洞窟をねぐらにすることはなく、深い森林での目撃情報は殆どありません。特に神社などの樹齢の長い大木に潜んでいることが多く、昼間にハルニレ、ミズナラ、カエデ、ケヤキなどの樹洞でヤマコウモリを見つけられる場合もあります。

大食いのヤマコウモリ

夜行性で日没後に採餌を始め、一晩中上空を飛びながら飛翔する昆虫を求めて森林の樹冠上など開けた場所で採餌し、夜明け前にねぐらに戻ります。エサを求めて高速で長距離を移動することができます。
1頭が1晩に捕食する昆虫の量は20gにまで達すると言われています。

徐々に数がへりつつあるんです…

減少しつつあるヤマコウモリ

近年日本国内でのヤマコウモリの観察報告が大きく減少しており、分布域が狭くなってきていると言われています。
メスは哺育をする際に繁殖コロニーを形成しますが、それを可能にする巨木の樹洞は極めて稀になっています。森林伐採や湿地開発による原生林の縮小や神社仏閣内における大木の減少、大径木の伐採などによりねぐらが消失しており、それによってヤマコウモリの個体群の維持が困難になり減少しつつあることが問題になっています。また大きな樹洞は生き物同士の競争も熾烈で、せっかくヤマコウモリの哺育コロニーに適した樹洞があったとしても他の鳥などに営巣されてしまうとヤマコウモリは姿を消してしまうそうです。

私たちにできること

樹齢の長い大木にある樹洞を好むため、大径木のあるような自然林などは可能な限り広範囲の保全が望まれます。大木そのものはもちろん、夜間照明の増加も危惧されていることから、ヤマコウモリの生息地域の周辺環境を整えることも求められます。

まとめ

ヤマコウモリについてまとめてみました。
たくさんの害虫を食べてくれる大食いのヤマコウモリは私たちにとっては益獣ですが、私たち人間の勝手な環境破壊によりその生息地域が脅かされています。天に吐いたツバは自分に返ってくることを肝に銘じて、ヤマコウモリのためにも私たち自身のためにも自然を守る意識を早急に高める必要があります。