クビワコウモリの生態と特徴

日本にしか生息しないクビワコウモリというコウモリの一種がいます。生息必要条件が高いためか、生息確認数が非常に少ない希少なコウモリで、絶滅の危機に瀕しています。

日本にしかいない⁉︎クビワコウモリとは

日本にのみ生息するクビワコウモリ

クビワコウモリは日本固有種です。1951年に発見されてから1979年の間までの約30年の間に確認された個体数は10頭程度にとどまり、その後10年間は全く発見されずにいました。1989年、中部山岳国立公園・乗鞍高原にて初めて集団繁殖が確認されました。
この繁殖個体群の最大確認数は250頭と非常に少なく、大変貴重であることがわかります。

希少なクビワコウモリ

クビワコウモリは本州中部と関東(福島県、栃木県、埼玉県、山梨県、静岡県、長野県、石川県、岐阜県、富山県)のみでしか確認されていません。本来コウモリは飛行により広範囲の移動が可能とされていますが、クビワコウモリの場合は確認範囲が限られています。これは生態的または地理的、もしくは遺伝的等の原因によると考えられていますが、実際はあまりよくわかっていないのが実情です。

クビワコウモリの生態

クビワコウモリの特徴

クビワコウモリはコウモリ目ヒナコウモリ科に属するコウモリの仲間です。体長5.5~6.5cm、尾長3.5~4.3cm、前腕長3.8~4.3cm、体重8~13gほどの大人の掌に入るほどの小型のコウモリです。耳介の先が丸く、耳珠はキノコ状をしています。

翼は幅広く、比較的低空を飛行します。体色は黒褐色ですが、上毛の先端は薄褐色、もしくは金属光沢のある白色のものもあります。頸部が黄金色をしており、頸輪のように見えることからその名がつきました。

クビワコウモリの生態

山地帯の主に樹林に生息します。夜行性で日没後に飛翔して昆虫を採食し、日没前にはねぐらに戻って昼間は樹洞や屋根裏などで休みます。乗鞍高原では出産保育場所として家屋の屋根裏や壁板の隙間を利用しています。

メスのみで群れを形成し、出産、保育を行い、初夏に一度、一匹の幼獣を産むと考えられています。幼獣は生後1か月ほどで飛翔できるようになります。9~10月頃には姿が見られてなくなるため、晩秋から冬眠すると考えられています。

希少なクビワコウモリを守ろう!

絶滅寸前のクビワコウモリ

森林伐採や湿地開発などにより、クビワコウモリの生息地が破壊されています。そのせいで生息数が減少していると考えられており、環境省はクビワコウモリを絶滅危惧種に指定し、保護しています。

クビワコウモリを守る会による活動

信州乗鞍高原には、世界でただ一か所しかわかっていないクビワコウモリの繁殖地がありますが、環境破壊によりその存亡が危ぶまれています。

そのため1995年には有志によりクビワコウモリを守る会が設立されました。毎年クビワコウモリのねぐらの保全や創出、観察会やコウモリに関する一般向けのお話し会、人家で捕獲されたコウモリの保護などの活動が行われています。またクビワコウモリ以外のコウモリについての調査活動も行われています。

また民間の環境保護助成を受けて日本で2例目のバットハウスが1996年に長野県乗鞍自然保護センター敷地内に建設されました。クビワコウモリを守る会では、バットハウスの維持・管理・整備などの活動も行い、そこでクビワコウモリの生態調査を行っています。

まとめ

絶滅危惧種である希少なクビワコウモリについてまとめてみました。
岐阜県高山市と長野県松本市の県境にある野麦峠においてもクビワコウモリが繁殖活動をしている可能性があるという報告がありますが、それでも生息個体数が危機的水準にまで達していることに変わりはありません。
クビワコウモリを絶滅させないためにも、ねぐらである樹林を守る意識を私たち一人ひとりが高める必要があります。