オヒキコウモリの生態・特徴

オヒキコウモリってご存知ですか?きっと見たことも聞いたこともないよ、という人が大半なのではないかと思います。発見例の少ないオヒキコウモリは謎である部分が多いのですが、意外とその鳴き声は聞いたことがあるかもしれません。

見つけたらラッキー!数が少ないオヒキコウモリ

オヒキコウモリの特徴

オヒキコウモリはコウモリ目オヒキコウモリ科に属するコウモリの仲間です。体長8cmほど、前腕5~6cmほどの長さで、一般的によく見られるアブラコウモリよりも大きく、日本に生息する食虫性コウモリの中では最も大型の種類です。体の色はこげ茶色をしていて、外耳の部分が丸くて大きいという特徴があります。また狭長で頑丈な翼を持ち、肩甲関節が二重になっていて、高度飛翔に適応した体のつくりになっています。

オヒキコウモリは7月に出産をするまでに急速に体重を増やし、出産を終える8月には体重が減少し、8月下旬には乳腺が委縮して保育が終了します。11月になると越冬に備えて脂肪を蓄積するため、再び体重を増やします。

またオヒキという名の通り、オヒキコウモリはその尾に特徴があります。膜外に突き出るほど尾が長く、尾を引きずって歩くこともあることからその名前がつきました。

オヒキコウモリの生態

中国、台湾、韓国、日本などに分布しています。日本においては北海道から九州まで幅広い範囲で確認されています。けれども記録が少ないため他国から日本に迷い込んできただけで繁殖していないのではないかと推測されていましたが、宮崎県や高知県、京都府、広島などで繁殖個体が確認されています。

謎の多いオヒキコウモリ

オヒキコウモリは主に乾燥した垂直になっている岩の割れ目などをねぐらにして生息しています。単独または2~14頭でコロニーを形成します。気温15度以下で不活発状態となり、体温を外気温近くにまで下げます。

空高く飛行し、飛ぶスピードが時速約160kmと極めて速いため、その姿を確認するのは困難です。日本では各地で1~数頭の採集例が報告されていますが、これらは飛行中、もしくは迷行中に落下したものがたまたま発見されただけにすぎず、日本における正確な生息地や繁殖状況ははっきりと把握されているわけではないというのが現状です。

現在環境省はオヒキコウモリを絶滅危惧種に指定し、保護しています。そのためもしオヒキコウモリを見つけることができたら、それはラッキーな出来事だと言えるでしょう。

人間にも聞こえる⁉︎オヒキコウモリの超音波

人間にも聞こえる!?オヒキコウモリの鳴き声

普通のコウモリはエサや飛行場所の位置特定をするエコロケーションに人間の耳には聞こえない超音波を出すことが一般的です。けれどもオヒキコウモリの場合は人間の耳にも聞こえる可聴域の周波数でエコロケーションを行うことが多く、「チッチッチッ」「キッキッキッ」といった短い鳴き声を繰り返します。鳥でも虫のものでもないこのような声が日没後に聞こえたら、それはもしかしたらオヒキコウモリの鳴き声である可能性があります。

ただし発見率の低いオヒキコウモリが発する音波の確認やエコローションの特徴を分析するまでにはまだまだ時間がかかると言われています。ちなみに活動期には昼間でもねぐら内で頻繁に鳴くそうです。

妨害シグナルで他のコウモリを妨害!?

オヒキコウモリの一種であるメキシコオヒキコウモリは、ライバルの捕食能力を阻害することができると知られています。他種のコウモリがエコロケーションをしながら昆虫に接近すると妨害シグナルを発生し、80%以上の割合で捕食の成功率を下げるそうです。

まとめ

知られざる生態の1つであるオヒキコウモリについてまとめてみました。
ものすごいスピードで飛ぶその姿を確認するよりも、もしかしたら鳴き声を確認する方が容易なのかもしれません。今まで聞いていたかもしれないあの声が、もしかしたらオヒキコウモリの鳴き声である可能性も…もしかしたらあるかもしれません。